広い視野を保つには地域外のネットワークが大切

地域おこし協力隊は、各地域に入り込むため、その地域のことにかかりっきりになり、広い視点で物事を考えたり、地域外からの情報を収集したりする機会が減ってしまう傾向にある。

そうした状態が長く続くと、次第にヨソ者目線での新鮮な気付きや新しい情報による発見など、地域おこし協力隊の持つ強みを発揮できなくなってきてしまう。

こうした状態を打破するためにも、地域おこし協力隊は地域外にもネットワークを持って、常に色々な情報を外から仕入れられる環境を作っておくことが大切だ。

特に、近隣地域で活動している地域おこし協力隊同士のネットワークを持つ事は非常に大切であると考えている。

自分の地域外の地域おこし協力隊とのネットワークを持つことにはたくさんのメリットがある。

香川県では「さぬきの輪の集い」と称した地域おこし協力隊同士の意見交換会を月に1度実施している。

そこで県内の協力隊同士はお互いの活動状況を共有したり、アイディアを交換したりしている。

そうした活動を通じて、地域おこし協力隊同士のネットワークは非常に強固なものになった。

お互いにいつでも気軽に連絡を取り合い、相談に乗ってもらったり、励まし合ったりしている。

そうした地域おこし協力隊同士のネットワークは利点は様々なものがあるが、中でも特に重要と言えるのは次の3つだ。

①「行政に頼らない情報入手」

②「普段の悩み相談などを通じた励まし合い」

③「行政区域に縛られずに、広域で地域を支える」

 

情報は降りてこない。仕入れる環境づくりが大切

地域おこし協力隊が自分の欲しい情報を確実に手に入れるためには、地域おこし協力隊自らが欲しい情報を仕入れる必要がある。

国や県から地域おこし協力隊に関する情報が流れてくる場合、市町村の自治体担当者を通じて地域おこし協力隊本人に届く。

地域おこし協力隊と情報の間に行政というフィルターが入っている状態だ。

この時、地域おこし協力隊が自らで情報入手経路を持たず、行政からの情報だけに頼ってしまうと、自分の欲しい情報は手に入らない。

情報と地域おこし協力隊の間に行政のフィルターが入ってしまうと、地域おこし協力隊本人が必要としている情報だったとしても、自治体担当者が不必要だと思えば、地域おこし協力隊に届けることをしない。

自治体担当者の意地悪ということではなく、地域おこし協力隊が望んでいる情報は、本人にしか分からないのだ。

こうした届かない情報を補うのが地域おこし協力隊同士のネットワークである。

例えば、国からある研修の連絡が各行政に送られてきた時、A市の地域おこし協力隊には自治体からの情報伝達があったが、B町の地域おこし協力隊には自治体担当者で情報がストップしてしまい、地域おこし協力隊本人に情報が行き届かなかったとする。

この時、地域おこし協力隊同士のネットワークがあって、お互いに研修情報等を確認しあう体制があれば、「あの研修いきますか?」と確認することができ、無事にB市の地域おこし協力隊にも情報が届く。

情報の入り口を行政だけに頼らずに、自分でその入手経路を作っておくことで、自分の行きたい研修や会いたい人の情報を漏れなく入手することができる。

情報は待っていても入って来るものではない。自分の欲しい情報をしっかりと漏らさずに入手するためにも、情報の入り口となるネットワークはしっかりと構築したい。

苦労や悩みを共に乗り越える仲間の存在の大きさ

地域おこし協力隊は、悩みや苦労は多い。

移住者という立場だけでも、気苦労は多いのだが、地域の方と一緒に新しいプロジェクトを進めていこうとすると尚更だという事は想像に難くないだろう。

しかも、なかなかそうした悩みを相談できる仲間がそばにいないケースもある。いくら行政担当者の方がそばにいるとしても、やはり立場が違うと相談しずらいことも多い。

こうした時に、地域おこし協力隊同士のネットワークを持っていると、悩みや不安を共有できる仲間とコミュニケーションできるので、新たな気付きや良い気分転換になり、根気強く活動するための大きな力になるのだ。

特に、新人協力隊は先輩協力隊から、自分も新人の頃に同じ悩みや不安を抱えてきたこと、どうやってそうした悩みを乗り越えてきたかなどを聞く事で、自身の状態を前向きに捉えることができるようになり、日頃の活動に積極的に取り組めるようになる。

こうした地域おこし協力隊の精神面を支えてくれる存在がいることは、非常に重要なポイントとなる。

いくら高いモチベーションで地域に入り込んで来た協力隊でも、地域で孤独と戦いながらずっとモチベーションを保つことは難しいし、モチベーションが下がってしまっては良いパフォーマンスを発揮することができない。

やはり気の合う仲間と一緒に切磋琢磨しながらも地域おこしを楽しめる仲間や環境が必要不可欠なのだ。

行政区域に縛られない発想と行動力

1つの地域で取り組んでいる限りは解決できないことも、隣の地域と協力体制を組む事で解決する課題も多い。

しかし、地域とは、行政区域や昔の地区の名残を越えて手を携えながら協力体制を組む事がなかなかできないものである。

そんな時こそ、よそ者である地域おこし協力隊ネットワークの出番である。

各地域の協力隊同士がしっかりとネットワークを築いていると、それぞれの地域課題や地域資源を照らし合わせながら、お互いの行政区域に縛られることのない解決策を見いだすことができる。

特に、地域の課題が共通している場合、そうした解決策への推進力はとても大きなものになる。香川県の場合、各地域の共通の課題として、イノシシによる農作物の被害が挙っていた。

ある時、地域おこし協力隊の意見交換会で「同じ課題があるなら一緒に解決しませんか?」という声をきっかけに行政区域を越えたイノシシ対策団体を結成し、それぞれの状況共有や課題解決に向けた活動をスタートした。

その活動の中では、イノシシ対策が進んでいる地域へ視察へ行ったり、各地域が取り組むイノシシ対策の情報を収集したりして、少しずつ広域的なイノシシ情報網を拡げていった。

抜本的な課題解決にはまだ至っていないが、行政区域の枠を越えて、地域の課題と取り組みの情報を共有し、少しずつ前に前に進んでいる様子はまさに地域おこし協力隊ネットワークが生んだ賜物だと考えている。

地域おこし協力隊ネットワークを持つ事により、視野が広がり、地域の資源を共有し合い、課題を補いなうような素晴らしい連携体制を作ることができるのだ。

これこそ、地域の固定観念にとらわれないよそ者の地域おこし協力隊の強みの1つである。

是非、横の地域おこし協力隊との連携を大切にし、地域に目を向けながらも、周辺地域全体を俯瞰で捉えられるような情報網づくりに取り組んでいただきたい。

欲しい情報をしっかりと入手するための情報網づくり、仲間と励まし合える協力体制づくり、地域を超えた視野と広域的な取り組み。

これらを実現させていくために、地域おこし協力隊ネットワークを構築することは、非常に有用である。

よそ者ならではの視点とフットワークの軽さを十分に生かし切るためにも、地域おこし協力隊同士の横のつながりをぜひ大切にしていただきたい。