地域おこし協力隊はこれまでの行政の業務と少し異なり、“”が中心にある制度だ。

地域課題解決に向けて機能するもしないも、“人”に大きく影響される

それ故に、人の心に寄り添ったフォローが非常に大切な業務の1つと言える。

特に地域おこし協力隊の心のフォローは重要だ。

地域の外から来る地域おこし協力隊は孤独や不安を感じやすい。

右も左も分からない地域の中で、重要な課題解決に取り組むというプレッシャーもある。

行政担当者はこうした状況をしっかりと理解し、丁寧にフォローする必要がある。

心に寄り添う丁寧なフォローとは具体的にどんなものだろうか。

心のケアの方法について、これが正解だというものはきっとないのだろう

各人の立場や状況で、心の状態は複雑に変化する。

普遍的な方法を見いだすのは至難の技だ。

しかし、それぞれに共通してできることはある。

「サインを見逃さないこと」「丁寧な声かけ」である。

真面目な頑張り屋ほど、サインは分かりにくい

人の心のバランスが崩れる時、人は必ずその前兆と言えるサインを出す。

表情が暗かったり、普段ならしないようなミスをしてしまったり、肌が荒れていたり、サインは様々だ。

日頃のコミュニケーションの中でそうした細かなサインを見逃すことの無いようにしたい。

また、言葉と気持ちは必ずしも一致しているわけではないことも理解しておくべきだ。

「大丈夫です!特に問題ありません!」

真面目で頑張り屋な地域おこし協力隊ほど、苦しい状況でもこのように話す。

そして、限界まで頑張り抜くと途中でパンクし、心と身体のバランスを崩してしまう。

言葉だけでなく、様子や行動までを総合的に考慮し、サインを受け取ることが必要だ。

地域おこし協力隊が不安や孤独、ストレス等を溜め込んでいると感じた場合には、状況に応じて休養を促したり、地域住民との間に入って話し合いを設けることも必要だろう。

サインを見逃すことなくキャッチすることは、その時必要な対応を可能にし、地域おこし協力隊の心のバランスを保つことを可能にする。

地域おこし協力隊の微妙な心の変化を捉え、フォローすることは行政担当者の最も重要な仕事の1つである。

丁寧な声かけから始まる信頼関係

サインを見逃さないためのポイントの1つは日頃からしっかりとコミュニケーションを取ることだ。

コミュニケーションと言っても、あまり難しく考えなくて良い。

気軽な挨拶から始まり世間話で終わる。

これで充分だ。

「最近どう?」「頑張ってるね」「いつもありがとうね」

何気ない声かけが地域おこし協力隊のサインをキャッチすることにつながる。

本当に困っている時、自分から「困っています。手を貸してください。」と言える人は少ない。

地域おこし協力隊も同様だ。

そんな時、周りからかけられた声に勇気づけられたり、相談するきっかけを作れたりする。

地域おこし協力隊の場合、「認めてもらえている」という実感が持てるかどうかがモチベーションに非常に大きく左右する。

地域協力活動に答えはない。

地域の課題は山積する中、地域おこし協力隊は自分で取り組みべき事を選択し、行動していく。

自分のすべきことはこれで合っているのか。」

「地域が本当に必要としているのは、これなのか。」

という問いは常につきまとう。

こうした状況の中、「自分は本当に必要とされているのか。」と思い詰めてしまう地域おこし協力隊は非常に多い

この時、周りからの声かけがあるか無いかで状況は一変する。

認めてもらえているかどうかの判断は難しい。

しかし、「ありがとう」の言葉はそれに値するほどの大きな力を持っている。

自身を肯定することができ、前向きに力強く活動に取り組むことができるようになる。

地域おこし協力隊にとって、最も身近にいる存在の行政担当者による声かけは活力につながる。

行政担当者による何気ない声かけ、感謝の気持ちを伝える素直な一言、これがあれば地域おこし協力隊はしっかりと前を向きながら地域の課題解決に取り組むことができる。