地域おこし協力隊の活動費に関して、事前に知っておくべきことがある。

それは、活動費が「公金」であるということ。

地域おこし協力隊の活動は多岐に渡り、地域によって様々な活動が行われている。

農業を始めたり、道の駅で販売する特産品を開発したり、カフェやゲストハウスなどを経営するに至ったケースもある。

活動内容から任期終了後のライフスタイルまで実にバライティに富んでいる。

こうした状況はメディアを通じて徐々に世間に知られており、「地域おこし協力隊はいろんな事に挑戦できる」というイメージが浸透している。

このイメージ自体は決して間違いではないが、一方で、公金の性質をきちんと理解する必要がある。

公金はどんなことに使えるのか?

公金は、その名の通り、公の目的に沿ったこと以外に使うことはできない。

例えば、協力隊が卒業後に農業を行おうと考えており、そのための資金を活動費から計上するのは難しい。

何故なら、農業を営むのは協力隊本人の目的であり、公の目的とは考えにくいからだ。

しかし、こうしたケースにおいても、農業のために活動経費を使用することは不可能ではない。

例えば、農業のノウハウを勉強するための研修費や教材費、交通費等々は計上されやすい。

また、作った農作物を販売するのではなく、地場産品の商品開発に充てたり、施設やコミュニティへの支援に充てる等であれば、公金で農業にかかる費用の計上が可能である。

つまり、直接的な利益を協力隊本人が享受する場合は、公金を使用することができないが、個人の目的が内包された公の目的を持った活動を設計できれば、そこに公金を計上することは可能である。

公金の使用可否の判断について

こうした公金の使用可否は、所属する自治体の理解度が大きく影響するということも併せて伝えたい。

予算計上の際、個人の目的が内包された公の目的を持つ活動設計を行政担当者が一緒に知恵を絞って上手に描いてくれる場合は、比較的幅広い用途で予算計上可能だが、そうではない場合は、「公の目的以外には予算は使えません」と一蹴されてしまうケースもある。

自身の活動目的が明確で、公金を活用しながらその準備をしたい場合は、担当者ときちんとコミュニケーションを取り、公の目的に則した活動設計を一緒に考えられるような関係性作りが大切である。

また、活動期間中にカフェやゲストハウス、農業を経営している協力隊もいるが、ほとんどの場合は、プライベートの時間に「副業」として行なっている。

つまり、公金を使わずに行なっている。

もちろんこの場合は、個人の目的通りに利益を出すことも出来る。

「もっと自由に予算が使えると思っていた…」

協力隊から良く聞く言葉の一つ。活動費が公金であり、公共の性質を事前に知ることができれば、着任してからのこうしたギャップはもう少し小さくできるはずである。

地域おこし協力隊を志す方へのポイント

①活動費はあくまで「公金」と心得る

何にでも使える訳ではない。公共の目的になることが大前提

②ただし、テストマーケティングや品種改良といった任期後の土台づくりには使えることもある。柔軟な発想と担当者との綿密なコミュニケーションにより個人の目的に則した予算計上を目指したい

地域おこし協力隊を導入予定の自治体の方へのポイント

①事前にしっかり公金の性質についてレクチャーし、協力隊の誤解をなるべく減らす

②協力隊からの予算案が、公金の目的としては一見不適切に見えても、しっかりと協力隊の想いに向き合い、他のアプローチで実現することが出来ないか一緒に頭を悩ませることが大切