「地域おこし協力隊の活動経費は200万円」と紹介されることが多いが、この表現では誤解を招きやすく、いささか不親切さを感じる。
活動経費について、正しく理解するには2つのポイントを知る必要がある。
住居費や公用車も
1つ目は、「住居費や公用車のリース代なども、活動経費から捻出されている」ということ。
活動するために必要な住居や車に係る費用のため、活動費の枠内で算出するのは当然と言えば当然なのだが、数字で示してみると少し印象が変わる。
例えば、月々5万円の家賃の住居を借り上げた場合、5万円×12ヶ月=60万円が年間必要になる。
つまりこの時点で協力隊の活動費は200万円−60万円=140万円。
さらに自治体によっては、既存の公用車の数が少ないため、隊員用に軽乗用車を公用車としてリースしたり、パソコンや机、電話などの機材を購入する必要がある場合もある。
その場合は更に活動費は削られ、およそ100万円程度になっているケースも少なくない。
活動に係る経費のため、当然の出費なのだが、当初「活動費は200万円」と考えていた隊員にとっては、少し面食らう内容だろう。
活動1年目は、採用された時点で、既にそうした経費は支出済みなのだから尚更である。
事後補正
2つ目は、「国による財政支援は、あくまで事後補正である」ということである。
総務省は地域おこし協力隊の活動に係る経費上限400万円(うち200万円は報償費※いわゆるお給料)を支援するとしている。
これは、地域おこし協力隊の活動に係った経費に対して、国が年度末に特別交付税として各自治体に補塡するというものである。
つまり、自治体で立て替えて支出したものに、国が補塡するというもの。
一見、「国が補塡してくれるのだから、上限200万円まで立て替えておこう」となりそうなものだが、そう簡単にはいかない。
実際にお金を立て替える場合、必要なものは立て替えるだけのお金。
これは自治体が国からの補塡を期待して立て替える場合も同様だ。
つまり、それだけの財力がないと、そもそも立て替えることができない。
人口減少が著しい中山間地域などは、税制が潤沢とは決して言えず、様々な予算が削られているのが現状である。
そして、いくら国が財政支援すると公表していても、100%それが正確に行われるかどうかは誰にも分からない(政権が変わって「特交措置を見直します」なんてこともあり得る)。
こうした状況を踏まえ、自治体はなるべくリスクは取りたくないのが本音だろう。
自治体担当者から「国は上限200万円とは言っているけれど、なるべく少ない予算で活動してもらいたい」と伝えられるケースもある。
以上、2つのポイントもきちんと伝えた上で、「活動経費は200万円」と紹介するのが望ましい。
協力隊と行政職員。しっかりコミュニケーションを取りながらで活動計画を立てていく必要があり、「もっとお金が使えると思っていた」という齟齬が生まれないようにしたい。
地域おこし協力隊を志す方へのポイント
①活動に必要な経費は全て200万円から計上されていることを心得よ。事業費に200万円がそのまま使える訳ではない
②実際に活動費としていくらぐらい使う事が出来るのか、事前に確認すると良い。自分のやりたいことと予算がかけ離れているようなら、1度冷静になって考えるべき
地域おこし協力隊を導入予定の自治体の方へのポイント
①予算について、地域おこし協力隊とあまり話さない自治体が多いが、本来は入念に話し合いながら執行していく必要がある。自治体の予算の流れ・使い方等は世間とは全く違うと心得て、仕組みや執行のための工夫など、丁寧にレクチャーするべき。
②事前に協力隊にどれだけ予算が割けるか検討しておくべき。でないと活動費200万円の言葉だけが1人歩きをし、協力隊の想いとのギャップを生む。
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