地域おこし協力隊も行政職員も将来の話をするのが苦手

地域おこし協力隊の任期は最大で3年。

この期間中は、地域課題の解決方法と併せて、自身の3年後の暮らしについても熟考する。

地域で活動する前から3年後の暮らしぶりをきちんとイメージできている場合もあれば、活動を行う中で徐々にイメージできるようになるという場合もあるだろう。

いずれの場合も、行政担当者とそうしたイメージを共有しながら、日々の活動を通じて自身の3年後を形作っていける体制が望ましい。

しかし、実際にこうしたイメージの共有がしっかりとできている地域は少ない。

地域おこし協力隊も行政担当者も、お互い「将来」の話をもちかけるのが苦手なのだ。

地域おこし協力隊の場合、その原因の1つに「恥ずかしさ」に近い感覚がある。

「きちんとしたイメージもできていないのに、人に話せない」と、自身の将来について話すのをためらってしまうことが多い。

周りの人間から3年後について注目されていると尚更だろう。

「3年後はどうするの?」地域の人に聞かれるたび、言葉を濁すか聞こえの良い建前で答えてしまう。

すると、自分から将来についての本音を話すきっかけをつくるのがどんどん少なくなってしまうのだ。

行政職員の場合は、地域おこし協力隊の将来について他人事になってしまっているケースが多い。

「彼らに3年後の話はしてはいけない」と、タブー視されている所すら見受けられる。

「任期後の話ができて初めて信頼関係が築ける」で前述したとおり、地域おこし協力隊の3年後を考えることは地域の3年後を考えることと同義である。

決して他人事や触れてはいけない事ではない。

行政職員は他人事だと勘違いしていて、地域おこし協力隊本人はまだ話せる状態ではないと思っている。

こうして将来の話は後回しにされ、中身の無いコミュニケーションをズルズルと続けてしまう。

最初はそれでも問題無いが、核心に触れる事の無いコミュニケーションでは、真の信頼関係を築くことはできない。

「何も分かってくれない」と不信感を抱くようになってしまう。

勇気を持って、自分から切り出す「3年後」について

行政職員から将来の話を持ちかけられないからといって、話さなくて良いわけではない。

3年後について誰よりも考え、汗をかく必要があるのは隊員本人だ。

自分から将来の事について話を切り出すべきである。

例え、人前で話すほどのビジョンが無かったとしても、勇気を持って今の率直な想いを言葉にしてみる。

このプロセスが大切である。

行政担当者は、隊員本人から将来の話を聞く事で、隊員のモチベーションの根底にあるものを理解することができるし、「自分にも協力出来る事はないか」と隊員の将来を自分事として捉えられるようになる。

ビジョンが明確でなければないほど、その意識は強くなるかもしれない。

例えぼんやりとしていたとしても自分の気持ちを言葉にする。

「こんなことを思っています。そのためにご協力ください」と、時には下手なプライドを捨てる必要がある。

行政と地域おこし協力隊は、3年後にそれぞれが笑えるよう、2人3脚で活動を進めていく。

そのためにはお互いがお互いの事を理解し、尊重し合える心が必要だ。

そのためにも、まずは自分から核心を切り出して、お互いに腹を割った話ができるような関係づくりをしたい。

3年後の話をするのは勇気がいる。

活動途中で今の想いとは別の想いが沸き上がってくるかもしれない。

それでも良い。

途中で変わっても良いからしっかりと今の自分の気持ちを言葉にする

そこから、活動を通じて自分自身も成長する本当の地域協力活動がスタートするのだ。