「アイディアを持ちかけてもなかなか実現されない」「行政が重い腰を上げない」

地域おこし協力隊の口からよく聞こえてくる言葉だ。

民間経験が長く、アイディアに自信がある地域おこし協力隊ほど、行政仕事の仕組みの違いを指摘したいのか、こうした愚痴をこぼすことが多い。

しかし、筆者はこうした言葉を聞く度「本当にそうか?」と疑問を抱く。

アイディアを持ちかけても実現しない時のパターンは大きく2つに分けられる。

「アイディア自体の質が乏しく、実現に値しない」と「伝え方が悪く、理解してもらえない」

地域おこし協力隊の場合、ほとんどが後者に該当するのではと感じている。

民間には民間の、行政には行政の、地域には地域のコミュニケーション作法があり、アイディアのプレゼンについても、その作法に乗っ取って伝える必要がある。

特に行政のお作法は特異で、やり方を間違えるとなかなか話は進まない。

企画書があって初めて一歩目

残念ながら行政にはそもそもアイディアを受け入れる土壌が民間と比較すると少ない。

これは正確性や公平性が重んじられる組織の性質上、仕方が無いことだ。

こうした相手に自分のアイディアを伝えるにはある程度の準備と工夫が必要である。

中でもアイディアを一枚の紙にまとめる企画書の作成は最重要項目であり、これがアイディアを形にする初めの一歩目となる。

民間企業においても企画書の重要性はもちろん高い。

しかし、行政組織を相手に話をする際は、更にその重要性が増すといって良いだろう。

地域おこし協力隊がアイディアを担当者に伝える際、企画書を作成することの利点は大きく2つある。

「自分のイメージを正確に伝え、相手の想像力を喚起することができる」と②「紙媒体で伝えることで確実性が上がる」ということが挙げられる

①自分のイメージを正確に伝え、相手の想像力を喚起することができる

企画書とは自分のイメージを相手に伝えるためのツールだ。

それ故に、このメリットは至極当然と言える。

しかし、対行政の場合、通常のそれよりも少し大きな意味を持つ。

前述した通り、行政組織はアイディアを受け入れる土壌はあまり整っていない。

地域おこし協力隊の斬新なアイディアを受けた時、それがどんな意味をもって、どんな効果をもたらすのか、なかなか理解していただけない。

この時、企画書でそれらをしっかりとまとめておくことで、自分の頭のなかにある未来図を相手に伝えることができるのである。

自分は何がしたいのか?

それによってどんな効果がもたらされるのか?

費用対効果は?

など、図や写真を使って、とにかく自分の頭の中と相手の頭の中が同じになるようにまとめる。

地域で長い間暮らしている行政担当者に、今までなかった視点のアイディアがもたらす地域の未来をいかにイメージさせるか

地域おこし協力隊の腕の見せ所といってもよい。

②紙媒体で伝えることで確実性が上がる

行政組織の情報共有はまだまだ紙媒体による部分が大きい。

日頃から大事な情報は書類でやり取りされ、そこに押されている印鑑が決裁における非常に大きな意味を持っている。

逆に、書類にならないもの、口頭での報告に留まるものは、非常に緊急であるか、書類にまとめるほどのことでもない内容であるかのどちらかである。

ほとんどが後者だろう。

書類でのやり取りが主の行政組織において、実現したいアイディアはまず書面にまとめるのが定石だ。

書面にすることで、確実に行政担当者にそのアイディアを届けることができる。

突然アイディア提案を口頭でもちかけ、多忙な行政職員の大事な時間を不意に奪うことは得策ではない。

しっかりと企画書にまとめたうえで、「お時間がある時に説明させてください」と提案し、担当者が落ち着いて聞いてくれる体制が整った時にキチンと話する。

これで確実にアイディアを届けることができる。

「わざわざ書面した」ということで本気が気持ちが伝わり、より入念にアイディアに耳を傾けてくれることもあるだろう。

日頃から書面で情報をやり取りしている行政職員に対してアイディアを届けたい時、やはり書面でそれを行うというのが一番確実な方法だろう。

 

アイディアを実現する際、いかにアイディアを相手に伝える、いかに自分と同じことを相手にイメージしていただくかが重要である。

この2つを可能にするのが企画書だ。

間違っても、いきなり口頭でアイディアをぶつけることは避けたい。

企画書にまとめる前の段階、アイディアのアイディアが欲しい段階では、口頭でぼんやりとイメージしているものを話して、「これについてどう思いますか?」と聞いてみるのも良いだろう。

しかし、実際に実行に移したいと思えるほどイメージが固まっているときは、確実に企画書を作って担当者に届けてほしい。

相手のコミュニケーション体制を理解したうえで、自分のイメージを相手に伝える

些細なことだが、こうした取り組みが大きな展開への一歩目となるのだ。