世は全国地域おこし協力隊争奪戦真っ只中
現在約2,600人(平成27年度現在)の地域おこし協力隊が活動しており、国はその数を2020年までに4000人まで増やす方向性を示している。
そうした中で、全国の自治体では優秀な地域おこし協力隊の確保に躍起になっている。
まさに全国地域おこし協力隊募争奪戦だ。
これまで、地域おこし協力隊を募集する際、各自治体が真っ先に利用していたのがJOIN(移住交流推進機構)が運営している「地域おこし協力隊」というサイトである。
このサイトは地域おこし協力隊の概要や隊員へのインタビュー記事、ブログ、募集情報などを掲載しており、地域おこし協力隊に関する基本的な情報はこのサイトを見れば知りえることができる。
また、全国の地域おこし協力隊募集情報も掲載されており、地域おこし協力隊に興味がある人は、地域別や活動内容別に地域おこし協力隊の募集を検索することができる。
実は、私も香川県の地域おこし協力隊に応募する際は、このサイトを活用させていただき、様々な情報を入手させていただいた。
確かにこのサイトは全国の募集状況や地域おこし協力隊に関する基本的な情報を入手する際には、非常に有用なサイトであるし、各自治体がこのサイトを通じて募集活動を行うということも間違いではないのだが、全国で地域おこし協力隊争奪戦がスタートした現状で、このサイトだけに頼って募集活動することは、有望な人材を確保するための最適な方法とは言えない。
消耗戦から抜け出して、ともに歩みを進めてくれる人を探す
この地域おこし協力隊争奪戦は、地方社会の人口増加施策の様子とどこか似ているものを感じる。
人口こそ、まさに争奪戦となっている昨今、各自治体では、地域に人を呼び込もうとあの手この手で地域の魅力を発信している。
そうした流れの中で、移住者にあれもこれもとサービスを用意して「是非きてください!」と手をこまねいているような施策には少し疑問を感じる。
例えば、移住希望者に対する住宅手当や家賃補助、就職や保育所斡旋など、どれも素晴らしいサービスではあるのだが、こうしたサービスを全面に取り上げて「これこそが我が街に来る最大のメリットです」と声高らかにPRするのは、逆効果ではないかと感じるのだ。
移住者に対する様々なサービスに反応する移住希望者というのは、自治体に対して「私たちのために何をしてくれるんですか?」といった受け身の考え方を持つ人が多い。
そうした考えのもと、自分たちに一番良いサービスを提供してくれる場所を探している傾向にある。
この場合、地域は消耗戦で、たくさんの人に来てもらうために、無理をしてでもたくさんのサービスを用意する必要がある。
地域が自ら首を少しずつ絞めていくような感覚だ。これでは長続きせず、移住者を増やす施策としても効果をあげにくい。
では、どのように自分たちの地域に人を呼び込めば良いのか?その答えの1つが、地域の課題を一緒に考えて、地域と共に歩んでくれるような人に来てもらうことではないかと考えている。
人口減少が進む地域の多くは、高齢化が進み、仕事が少なく、若者が戻って来れないなどの課題を抱えている。
こうした課題を隠して、街の良い部分だけを取り上げるのではなく、あえてこうした課題を地域の特色として捉えて、「課題を一緒に考えていきませんか?」とPRする。
そうしたPRに共感してくれる人の絶対数は少ないかもしれない。しかし、そうしたPRに共感してくれる人の場合、地域に積極的に関わり、その人自身が広告塔となって、あらたな人材を地域にもたらしてくれることが多い。
無理のあるサービスを並べて消耗戦に入り込みながら受け身の住民を増やすよりも、地域の課題をさらけ出して、それを一緒に考えてくれる人と少しずつ共感者を増やしていく方が、確実に地域の人口増加並び地域活力の向上につながる。
地域特性やビジョン、活動内容で共感を呼ぶ
こうした人口増加施策の流れと地域おこし協力隊の募集の流れは非常に良く似ている。
数多くの自治体が地域おこし協力隊を募集する際に利用しているJOINのサイトでは、基本的な活動内容の他に、賃金や雇用形態、活動日数などで検索がかけられるようになっており、便利である反面、賃金や雇用形態等で比較されてしまい、地域の特色や活動内容などに共感して地域を選んでいただける確率が低くなってしまう。
確かに賃金や雇用形態は生活するうえで大切な部分であるため、確認することはとても重要なのだが、地域として、地域おこし協力隊本来の目的を達成していただくために最も重要な部分は、地域の特色に興味を持ち、地域が描く未来に共感し、共に地域課題を解決していきたいと思っていただける人材の確保である。
そうした意味において、JOINは他の地域との差別化を図ることが難しく、優秀な人材を確保するための方法として決して効果的とは言えない。
ではどうすれば良いか。
一言でいうならば「目的から逆算したPRを徹底して行う」ということ。
これに尽きる。
「地域おこし協力隊を導入する理由」を明確にする必要性はこれまでにも述べたが、PRの方法を考える際も導入目的が明確化できているかどうかがとても大きな意味を持つ。
導入目的が明確になっていれば、どんな人材が必要かも明確になる。必要な人材が明確になっていれば、そうした人材が普段どこにいて、どんなメディアを見ているのかを分析することができる。
こうした逆算から地域おこし協力隊募集PRの方法を決めていくことで、効果的なPRが可能になるのだ。
例えば、地域おこし協力隊の導入目的を「農産物の販路拡大や商品開発を通じた農業の活性化」とし、理想の人材を「農業や商品開発・販売に明るく、且つ地域の特色やビジョンに共感をしてくれる人材」と想定したとする。
まずは募集要項を通じてこうした地域の想いを地域おこし協力隊希望者に届けたい。
これには理想の人材が普段いる場所や目にしているメディアを通じたPR戦略を練る必要がある。農業関係者や就農希望者が集まる場所や目にするメディアを分析し、それらに対してアプローチする。
雑誌や新聞、webメディアなど、最近では様々な専門メディアが存在しており、農業や商品開発・流通に関するメディアも多数存在する。
そうしたメディアを上手く利用して、すでに関連事項に興味関心のある人材に募集内容を届けることも効果的だろう。
ビジョンと役割を明確に、魂を込めて
募集内容を届けるだけでは、理想の人材を確保するのは難しい。
地域おこし協力隊募集において、もっとも重要なことは地域の想いに共感できるかということだからである。
いくら興味・関心・経験を持っている人だからといって、地域おこし協力隊として充分なパフォーマンスができるかと言ったらそうではない。
地域の想いやビジョンに共感して、地域の方と共に一歩一歩歩みを進めていけることこそが地域おこし協力隊にとっての一番の素質なのである。
ビジネスとして農業や商品開発等を考えているのであれば、東京、大阪などの都市圏で行うほうがメリットが大きいのは明らかである。
つまり、募集内容については、地域の現状や課題をしっかりと伝え、それを踏まえてどんなビジョンを描いているか、その中で地域おこし協力隊にはどんな役割を期待しているか、など、明確に、また魂のこもった内容でまとめるということが非常に大切である。
地域おこし協力隊を導入する理由を再び見直して、理想の人材像を明確にする。
理想の人材へ届けるための分析を徹底して行い、有効なメディアを利用する。
その中で、地域のビジョンに共感していただけるように、心のこもった募集内容をまとめる。地域の未来をともに歩んでくれる人材探しは決して簡単なことではない。しっかりと作戦を立てて準備することが必要である。
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