行政職員と地域おこし協力隊の定例的な打ち合せの機会(定例会)を設けているところは意外にも少ない。

定例的な打ち合せがない所では、特に報告すべき事柄がある時など、その都度その都度で席を設けている。

こうした定例会の無いコミュニケーションの仕組みには非常に危険を感じる。

行政職員と地域おこし協力隊とのコミュニケーションの絶対数が減ってしまうからだ。

よほど上手くコミュニケーションを取れる人で無い限り、いくら同じ組織に属していたとしても、次第に相手と会話する機会が減っていき、お互いの心の距離が離れていく。

特に地域おこし協力隊と行政職員という異なる立場の2者であれば尚更だ。

最終的にはお互いが何を考えているか分からないという状態に陥ってしまう。

業務に慣れ始めてくるとこうした状況は顕著になってくるのも恐い所だ。

協力隊側は「前回は大丈夫だったから、今回も大丈夫だろう」と独断で活動してしまい、行政側も「何も言ってこないと言う事は特に問題は無いんだろう」と問題を見逃してしまう。

こうした事態を防ぐためにも、常に行政担当者と地域おこし協力隊は十分なコミュニケーションを取る必要があり、その機会をしっかりと確保するためにも、定例会を設けることは非常に有用である。

週に1度とまでは言わないが、最低でも月に1度以上は担当者と地域おこし協力隊とで膝をつき合わせたコミュニケーションの機会を設けるべきだ。

 

定例会を設けることによるメリットは様々あるが、ここでは特に重要な3点についてまとめる。

定例会のメリット1:アイディアを実現しやすくなる

定例会にはなるべく決裁権を持つ上司に参加してもらいたい。

そうすることで、地域おこし協力隊のアイディアベースの企画案などについて定例会でお披露目し、その場で方向性を決めることができる。

地域おこし協力隊のアイディアを無駄にすることなく、協議に図ることができるのだ。

アイディア豊富な地域おこし協力隊にとってはそのアイディアを実現させるためのプロセスが明確になる。

行政担当者にとっても、地域おこし協力隊の口から直接上司にプレゼンしていただく方が都合が良いことが多い。

次第に定例会の運用に慣れてくると、「それは君の口から直接課長に言った方が効果があるよ。私がフォローしますから」と、地域おこし協力隊と行政職員とで、アイディアを形にするための水面下の戦略会議が行われたりもする。

こうした機会を設けていないと、日々の業務に忙殺され、地域おこし協力隊の素晴らしいアイディアでも、ぼんやりと捉えてしまい、なかなか実現プロセスに載せることができない。

定例会という機会を設けることで、アイディアを吸い上げて可能性を検討する仕組みが生まれるのだ。

定例会のメリット2:地域おこし協力隊の微妙な心境の変化も汲み取れる

定例会を行う上でのポイントの1つは「特段報告が必要な大きな事が無い場合であっても、定期的に開催する」ということである。

地域おこし協力隊の活動は日々進行していくが、常に報告に値する状況になるかといえばそうではない。

週に1度、定例会を実施する場合は、「先週に引き続き○○をしています」といった具合で報告が終了することも少なくないだろう。

この時、「あまり報告事項も変化がないので、定例会ではなく、報告の必要が生じた時に開催しましょう」と判断するのは軽卒だ。

何故なら、この定例会は、地域おこし協力隊の取り組みについての状況を把握するという機能の他に、地域おこし協力隊の心身の状態を確認するという機能も持ち合わせているからである。

仮に地域おこし協力隊の取り組みについての進展がなかったとしても、「最近どうですか?」「何か変わったこと、困っていることなどありますか?」と、地域おこし協力隊の心身の状況を知り得る機会として活用すべきなのだ。

地域おこし協力隊は活動や生活で困っている事、相談したい事があれば必ずSOSサインをだしている。

それが人によっては非常に軽微なもので、他人に伝わりにくいケースもある。

口では「全然大丈夫です」と言っていても、実は心身ともにいっぱいいっぱいな場合もある。

SOSサインを見逃し続けると、地域おこし協力隊はパンクし、活動を続けることが難しくなる。

そうなる前にしっかりとサインをキャッチし、フォローする体制を整えたい。

顔色はどうか・・・言葉に詰まっていないか・・・楽しそうに話をするか・・・そうしたサインをキャッチする大きなチャンスとして定例会を活用していただきたい。

定例会のメリット3:地域おこし協力隊の3年後に向き合う時間

地域おこし協力隊の任期は最長で3年間だ。

この間に地域の課題解決に向けて精一杯取り組む。

そして、その任期が終了した際、どのように暮らしていくかを考えていかなくてはならない。

この地域おこし協力隊の3年後の話は行政職員にとって、決して他人事ではない

もちろん、3年後の進路に向けた準備でもっとも努力する必要があるのは地域おこし協力隊本人であることに間違いはないが、行政職員もしっかりとそれに向き合い、寄り添ったフォローをする必要がある

地域おこし協力隊がどんな3年後を描いているのか?

これをしっかりと把握したうえで、日々の取り組み方針や活動スタイルなどを検討していきたい。

地域おこし協力隊がどんな3年後を描いているのか?

実はこの事をしっかりと把握できている行政職員は少ない。

「今の取り組みの延長線上で、何らかのなりわいを作っていくだろう」というぼんやりしたイメージしか共有できていない。

あるいは、「着任当初、地域でカフェをやりたいと話していたから、きっと今もそうなんだと思う」という昔話をそのまま信じ込んでいる場合もある。

地域おこし協力隊は、日々の取り組みを通じて、様々な人や経験に出会う。

そのなかで3年後の自分も常に考えている。

場合によっては当初思い描いていたイメージと違った未来の自分を想像していることもある。

こうした将来への気持ちの変化をそばにいる行政職員はきちんと把握しておく必要がある。

しかし、日々の業務の中で、地域おこし協力隊が自身の3年後の話をする機会はほとんどない。

立ち話程度にすることはあっても、本当に腹を割って本音で話をすることはまずないだろう。

だからこそ定例会の機会を活用して、しっかりとお互いに3年後の話をする時間を設ける必要があるのだ。

膝と膝をつき合わせて、将来のことについて、真剣に話す機会を設け、日々の取り組みがその将来像に向けて一歩一歩前進していけるような体制をつくる。

こうした地域おこし協力隊の将来に寄り添ったフォローは行政職員の大きな役割の1つである。