したたかに人脈を開拓する

地域おこし協力隊は、地域における人脈を自らの力で開拓していく必要がある。

寄り合いに参加したり、挨拶周りをしながら少しずつ人脈を拡げていくのだが、その際、むやみやたらに人脈を拡げていくことはあまり得策とは言えない。

したたかに戦略を練って、慎重に人脈づくりを進めていくことをオススメする。

見境無しに色々な方との人脈を作ってしまうと、地域特有の人間関係や派閥に巻き込まれ、返って身動きが取れなくなってしまう可能性があるからだ。

 

では、どのように人脈づくりを進めていけば良いのか。

最善の方法というのは、それぞれのおかれている環境やミッションに寄って変わってくるものだが、人脈づくりにおけるヒントは各協力隊で共通している。

どの地域おこし協力隊でも、まず地域で見つけるべきは「仲間」「メンター」「友達」だということである。

人脈づくりを進める上で、この3者をいかに見つけるかが、その先の活動内容の充実や成否に非常に大きく影響する。

この3者に出会うために嗅覚を働かせながらしたたかに人脈づくりを進めたい。

モチベーションの補完には欠かせない「仲間」

ここでいう「仲間」とは、同じ志を持って、共に活動をしていける人の事をいう。

どんなに優秀な地域おこし協力隊であっても、地域おこし協力隊が1人でできることは非常に少ない。

アイディアにも限界があるし、何かを押し進めていくためのパワーも限られている。

しかし、同じ志を持った仲間がいればこうした状態は一変する。

活動のアイディアの幅は一気に広がりを見せ、活動の推進力も単独で行っている時と比較して数倍にもなる。

そして、最も重要なことはモチベーションが維持できるということである。

人のモチベーションには、どうしても上り下がりがあり、高い意識をずっと維持した状態で1つの事に取り組むのはとても難しい。

しかし、仲間がいることで、モチベーションの補完をすることができる。

例えば、1人がとてもモチベーションが下がってしまったとする。1人で活動している場合は、これだけで活動力は低下してしまうが、仲間がいる場合は、1人のモチベーションが落ちている間は別の仲間がそれを補うように活動を進めていくことができるのだ。

こうして、お互いにモチベーションを補完し合いながら活動をストップさせることなく進めていくことが可能なのである。

真の仲間を見つけるために「声に出す」

「仲間」を上手く見つけるためにはどうすれば良いのか。

これは自分の活動や想いをできるだけ声に出して発信することが大切である。

声の出し方には色々な方法がある。

直接色んな方の前で口に出す事はもちろん、FacebookやTwitterなどのSNS、広報誌やHPなどのメディアなど、ありとあらゆる方法で声に出すことが可能だ。

自分の想いを声に出す事で、それに共感する人たちが自然とその情報をキャッチして、向こうから声をかけてくれるようになる。

こうして声をかけてくれる方ときちんと向き合って、「この人なら一緒にやれそうだ」という人を見つける。

それが後に「仲間」になる人である。

仲間を見つける際に注意すべきは、自分から積極的にそうした人物を探そうとしないことだ。

自分から積極的に「仲間になってくれませんか?」と声をかけた場合、ほとんどの人の場合、協力はしてくれるだろうが、活動の辛い時期でも一緒に乗り越えていってくれる真の仲間には至らない。

もちろん中には共に歩みを進めていける方も出てくるだろうが、確率は低い。

やはり、向こうから「君と同じ気持ちだ。一緒にやろう」と声をかけてくれるほどのパワーと情熱が大切なポイントだと言える。

あえて自分では仲間を探そうとせずに、ひたすら自分の活動と想いを声に出し続けることが大切だ。

地域にはやる気や情熱があっても、なかなか一歩踏み出す勇気が無かったり、踏み出し方が分からない方がたくさんいる。

あなたの声でそうした方の背中を押す事ができたら、これほど理想の仲間の見つけ方はないだろう。

活動のヒントをくれる「メンター」

「メンター」とは、地域協力活動を進めていく際の相談役である。

地域協力活動は基本的に地域おこし協力隊が中心となり、行政や受入地域の方と一緒に進めていく。

地域協力活動の軸となる活動計画や活動企画等は地域おこし協力隊本人が立案し、それをもとにそれぞれの役割分担で活動を進めていく流れが一般的である。

つまり、地域協力活動の根幹は地域おこし協力隊自らが考え、生み出す必要がある。実はこの作業、非常に難易度が高い。

何故なら、地域協力活動には「これなら大丈夫」といった答えが無いという事に加え、地域おこし協力隊の場合、その活動が地域にとっても、自分にとっても、3年後につながるものである必要があるからである。

こうした環境の中で、自分が取り組むべき地域協力活動の軸を定めていくことは非常に難しい。

しかし、それでも地域おこし協力隊は自分の活動の軸を自分自身で決める必要がある。

自身の活動の軸を決めるといった大きな決断をする際には、自分1人だけの考え方で決めるよりも、複数人からある程度意見やアドバイスをいただきながら、それらを参考に決めていくことが大切だ。

その際、重要になってくるのか「メンター」の存在である。

地域を良く知るポジティブおせっかい

地域おこし協力隊にとって理想のメンターは、地域の事を良く知っていて、面倒見が良いポジティブな人である。

地域で活動をするうえで、地域の人間関係や歩んで来た歴史を知る事は非常に重要であるが、地域おこし協力隊本人がいくら熱心に勉強したところでなかなかその全てを知りえることは難しい。

しかし、地域の背景を知っている方に相談することで、地域の歴史や背景を汲んだ上でのアドバイスを手に入れることができる。

地域のバックグランドを理解したうえで、地域協力活動の方針を構成していく際、こうした方からのアドバイスは欠かせない。

メンターがポジティブであるということも大切だ。

地域で何か始めようとすると、それを妨害するものの1つに「やる前から否定してしまう人」の存在は決まって挙げられる。

本人に悪気は無いのだが、性格上ついついネガティブな発言を頭ごなしにしてしまい、活動の芽を摘んでしまう。

地域協力活動に答えは無い故に、ある程度の意義や必要性を見いだすことが出来たならば「よし!やってみよう!」というポジティブな思い切りの良さも時には必要である。

地域おこし協力隊が活動に行き詰まっている時、背中をポンと押してくれるような前向きなメンターの存在は本当に有り難い。

目立つ人の中からメンターを見極める

地域の人間関係や歴史について詳しく、且つ地域において前向きに色んな事に取り組んでいる人には、地域の重鎮と言われるような人や30〜50代の働き盛りで、地域でもいくつかの役割を持っているような人が多く、地域において、ある程度の発言権を持っている。

また、こうした人は地域でも目立っている存在なので、比較的容易に出会うことができるだろう。

ただし、こうした人の中には、「やっても無駄」と頭ごなしに否定するネガティブタイプも多いので、自分の活動に対して、建設的なアドバイスをくれる人をきちんと見極めていきたい。

地域おこし協力隊はあくまで自分自身が中心となって、地域協力活動を推進していく必要がある。

あまりメンターに頼り切りになってしまっても良い状態とは言えないが、地域のバックボーンや人間関係、資源など、そうした判断材料を適切に盛り込んだ実用性のある地域協力活動を行っていくためには、時にメンターに相談しながら方針を決めていくのが望ましい。

そのためにもできるだけ早い段階で自分の活動を心から応援してくれる地域のメンターを見つける事が大切である。

不安や焦りを取り去る「友達」

「友達」は地域協力活動に関係が単なる友人ということである。

地域おこし協力隊は地域おこし協力隊である前に、1人の人間であり、移住者である。

したがって、その地域においては友人や知人が少なく、就任当初は地域の中で孤独を感じることも少なくない。

また、地域協力活動を自らの裁量で計画・実行していく必要もあることから、地域おこし協力隊に係るプレッシャーも大きい。

様々な不安やストレスを感じやすい地域おこし協力隊にとって、気軽に色んな話ができる友人の存在は非常に大切である。

私自身もこうした友達の存在に何度も救われた経験がある。

特に活動序盤は、自分の始めたことが本当に正しい事なのかすら分からず、不安や焦りを感じていた。

そんな時、たまたま移住者交流会で出会った友人達と定期的に飲み会を開くようになり、少しずつ交友関係を深めていった。

そこで交わされる会話は普段から常に考えている地域協力活動の事ではなく、ただの世間話や馬鹿話である。

不思議なもので、そうした他愛ない会話でゲラゲラと笑っているうちに、感じていた不安や焦りはどこかへ消えてしまっていたのである。

「明日からまた頑張ろう」そう思えるようになっていた。

私の場合、不安や焦りはどんな時でも襲ってくるのだが、常にこうした友達との何でもない会話を通じてそれらを取り去って、また、前向きな気持ちで地域協力活動に取り組むというサイクルをずっと繰り返しているように感じる。

そうした友達がそばにいてくれたからこそ、不安にかられながらも思い詰め過ぎることなく、一歩一歩前に進んでこれたんだと確信している。

ぜひ、これから地域おこし協力隊を目指すみなさまにもこうした友達の存在を大切にしていただきたいと思う。

「仲間」「メンター」「友達」この3者の存在の重要性はどんな環境・ミッションであっても共通して大切なことだ。

やみくもに人脈を拡げるのではなく、したたかに、こうした3者と積極的に関わりを持てるような戦略を立てたうえで、人脈開拓を進めていただければと思う。