「フリーミッション」潜む危険性
「何となく導入した」
残念ながら、地域おこし協力隊を導入している自治体からこうした印象を受けることが少なくない。
首長からのトップダウン、鶴の一声によって導入が決まり、「地域おこし協力隊を何故導入するのか?」ということをほとんど議論せずに導入しているのでは、と感じられる自治体も少なくない。
そうした自治体に入ってしまった地域おこし協力隊は、いくら志が高くても、高いパフォーマンスを発揮するのはなかなか難しい。
事前に地域と行政の間で合意形成がなされていないので、「地域・行政は何を望んでいるのか?」「何故地域おこし協力隊を募集していたのか?」という初歩的な疑問で立ち止まってしまうことが多いからだ。
また、そうした自治体ほど、フリーミッションを採用していることが多く、「とりあえず、地域の方への挨拶から初めてください。
そこからあなたが必要だと思う事を活動にしてみてください。」と一番最初に説明し、その後は地域おこし協力隊に丸投げしてしまうケースが多い。
これでは地域に初めて入っていく協力隊は何から手を付けて良いのか全く分からなくなり、立ち往生してしまう。
手をつけるべきことを見つけることができたとしても、かなり長い時間を要する場合もある。
課題を見つめ直すことから全ては始まる
こうした事態を避けるためにも、協力隊の導入目的は、事前に地域・行政間でしっかりと議論を重ねた上で設定し、それに見合ったミッションを設定することが非常に大切である。
とくに、地域にはどんな課題が存在して(課題掘り下げ)、どのような状態になればそれが解決できて(ビジョン)、そのためにどんなことをやる必要があるのか(ミッション)をしっかりと共有しておく必要がある。
地域にとって、今何が課題なのか?何が必要なのか?こうした事を事前にしっかりと行政×地域で議論し、地域のビジョンを整理するプロセスは非常に大切だ。
そうして整理された課題やビジョンをもとに、自分たちで取り組める部分、外部人材でないと取り組めない部分を理解していく。
そして、外部人材でないと取り組めない部分のうち、地域おこし協力隊を活用すれば解決できる部分についてを、地域おこし協力隊のミッションとして設定する。
こうすることで、地域おこし協力隊のミッションが、地域の大きなビジョンに向けた1つの柱として機能し始めるのである。
また、そうしたミッションを事前に設定することで、地域に必要な人材像も明確になり、必要なスキル・職能を持った人材を集めることに注力できる。
地域おこし協力隊側にとっても、地域にどんな人材・スキル・ビジョンが求められているかを、事前に把握することができるため、地域に入ってから「こんなはずじゃなかった」というミスマッチをなくすことにもつながるのだ。
一番を汗をかくべきは地域住民
もちろん、事前にミッションを設定するというのはとても労力の係る作業だ。
それ故に、地域おこし協力隊に「何か課題を見つけてくれ」と、任せてしまいたくなる気持ちもも理解できる。
しかし、地域のミッションを設定する際、やはり一番汗をかかなくてはならないのは、その地域で暮らす地域住民・行政職員である。
地域では今どんな事が起きているのか?
これからどんな方向に向かうのか?
どんなヒト・モノ・コトが必要なのか?
ただ何となく地域おこし協力隊を導入するのではなく、ぜひ1度立ち止まってこうした事に思いを巡らせ、「何のために地域おこし協力隊を導入するのか?」というところに徹底的にこだわりを持っていただきたいと思う。
これから地域おこし協力隊を志す方は、その地域にはどんなビジョンがあるか?なんのために自分が呼ばれているのか?をしっかりと考え、心から共感できる地域で活動をすることをオススメする。
ただ「聞いた事がある地名だから」「面白そうだから」で地域を選んでしまうと、決して短くない3年間を棒に振ってしまうことになりかねない。
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