そもそも地域おこし協力隊とはどういう制度なのか。

まずは「制度」としての地域おこし協力隊についてまとめてみたいと思う。

地域おこし協力隊という言葉自体は、ようやく耳慣れてきたのではないだろうか。

総務省がこの制度をスタートさせたのは平成21年度。

全国各地の31団体、合計89名の地域おこし協力隊から始まった。

それから丸9年が経過した平成31年度現在では、全国で1,061団体、5,359名の地域おこし協力隊が活動するまでに拡大された。

その変遷の様子はこちら↓

隊員数 実施自治体数 うち都道府県数 うち市町村数
平成21年度 89 31 1 30
平成22年度 257 90 2 88
平成23年度 413 147 3 144
平成24年度 617 207 3 204
平成25年度 978 318 4 314
平成26年度 1,511
(1,629)
444 7 437
平成27年度 2,625
(2,799)
673 9 664
平成28年度 3,978
(4,090)
886 11 875
平成29年度 4,830
(4,976)
997 12 985
平成30年度 5,359
(5,530)
1,061 11 1,050

※総務省の「地域おこし協力隊推進要綱」に基づく隊員数
※隊員数のカッコ内は、名称を統一した「田舎で働き隊(農林水産省)」の隊員数(26年度:118人、27年度:174人、28年度:112人、29年度:146人、30年度:171人)と合わせたもの。

(参考:総務省「地域おこし協力隊」)

実施自治体や隊員数は順調に増えており、一部では総務省の久しぶりのヒット施策とも言われる。

国は今後も一定の拡大路線を示しており、この先も地域にとって影響力のある存在になりえそうだ。

では、一体地域おこし協力隊とはどんなことをする人たちなのだろうか。

その概要として、総務省が公開している資料を一部抜粋してみる。

○制度概要:都市地域から過疎地域等の条件不利地域に住民票を移動し、生活の拠点を移した者を、地方公共団体が「地域おこし 協力隊員」として委嘱。隊員は、一定期間、地域に居住して、地域ブランドや地場産品の開発・販売・PR等の地域おこしの支援や、 農林水産業への従事、住民の生活支援などの「地域協力活動」を行いながら、その地域への定住・定着を図る取組。

○実施主体:地方公共団体

○活動期間:概ね1年以上3年以下

○地方財政措置: ◎地域おこし協力隊取組自治体に対し、概ね次に掲げる経費について、特別交付税措置

① 地域おこし協力隊員の活動に要する経費:隊員1人あたり400万円上限 (報償費等200万円〔※〕、その他の経費(活動旅費、作業道具等の消耗品費、関係者間の調整などに要する事務的な経費、定住に向けた研修等の経費など)200万円)

※ 平成27年度から、隊員のスキルや地理的条件等を考慮した上で最大250万円まで支給可能とするよう弾力化することとしている(隊員1人当たり400万円の上限は変更しない。)

② 地域おこし協力隊員等の起業・事業承継に要する経費:最終年次又は任期終了翌年の起業する者又は事業を引き継ぐ者1人あたり100万円上限

③-1 地域おこし協力隊員の募集等に要する経費:1団体あたり200万円上限

③-2 「おためし地域おこし協力隊」に要する経費:1団体あたり100万円上限

◎都道府県が実施する地域おこし協力隊等を対象とする研修等に要する経費について、普通交付税措置(平成28年度から)

(参考:総務省製作PDF「地域おこし協力隊概要」)

読み慣れていない文体に読みにくさを感じた人も多いのではないだろうか。

ここで読むのを止めてしまう人がいることは想像に難くないが、国が提示している文言をあえてそのまま引用した。

地域おこし協力隊を志す方及び地域おこし協力隊に関わる関係者の方は、この文章から地域おこし協力隊の骨格を読み取る必要があるからだ。

話を地域おこし協力隊の概要に戻す。

色々と難しい言葉で書かれているが、簡単に言うと、

都市から地方に移り住んで来れる人が、最長で3年間、地域貢献活動を行いながら、その地域への定住を図る。

そして、その活動費用については、上限400万円(うち250万円までは人件費に充てることができる)を総務省が財政支援するというものである。

つまりは、地方自治体の財政的な負担を抑えながら、地域に貢献してくれる人材を呼び込むことができる制度と言える。

また、特徴としてあげられるのが、任期終了後に地域おこし協力隊が起業を希望する場合、最大で100万円の財政支援を受けることができる。

「地方で会社を立ち上げたい!」「新規就農したい!」という方には、最大3年間の助走期間(給料、家、自治体職員という信頼etc.)がついて、さらに100万円の財政支援を受ける事ができるという、大変便利な制度であるといえる。

あくまで概要をまとめると以上のように一見シンプルな制度のように思えるが、実は大変な多様性を帯びており、決して一言で語れる制度ではない。

与えられるミッションや地域に置ける役割、行政との距離感などなど、地域に寄って千差万別であり、それ故に地域や行政、そして地域おこし協力隊本人までもが、その全体像を理解するのに時間を要している。制度開始から10年が経過する現在でも、制度理解祖語によるトラブルが多発しているのは、こうした多様性に起因するものだ。

こうした多様な地域おこし協力隊について、次回以降で出来るだけ分解して紹介していきたい。

各項目に分解する中で、地域おこし協力隊を志望する方、あるいは地域おこし協力隊を導入予定の自治体職員向けに、各項目の終わりに筆者なりのポイントをまとめさせていただいた。両方の立場を経験した者の意見として、参考にしていただければと思う。